USPTOの査定系再審査手続において導入する新たな運用(2026年4月5日以降)
Official Gazette Notice
Pre-order Procedure regarding Substantial New Question (SNQ) determination in ex parte Reexamination Proceedings
2025年9月、John Squires氏がUSPTOの長官(60人目の長官)に就任した。Squires氏の重要な使命として101条の特許適格性の審査における判断基準を明確にすること、さらに、米国特許の信頼性を向上させるという大きな2本柱がある。統計データとみる限り、少なくとも一つのクレームがIPRで無効となる確率は70%近くなっており、これでは特許製造工場としてのUSPTOは欠陥商品(defective US patent product)を世に送り出していると言われても仕方ない。そこでSquires氏はとんでもない対応をしだした。すなわち、IPR請求をまずは理由なく長官の裁量権の基に不受理とした。なお、2016年のCuzzo最高裁判決によって、IPR請求不受理の決定に対しては控訴不可である。そこで、実務家の間ではIPRに代わり従前の査定系再審査による特許無効化の試みが増大した。本新規運用は、急に増えた再審査請求に対してUSPTOのCentral Reexam Unitの過負荷を軽減するための対応策である。さらに、本運用によって、USPTOが再審査請求を受理する前に、権利者が意見書を提出し再審査請求の受理を阻止する機会を与えるという点が顕著であり、言い換えると、再審査請求が受理される数も減らす(すなわち、再審査で米国特許が無効になる率を減らす)ことに繋がると考える。
IPR請求の多くは長官の裁量権で不受理、再審査請求の受理件数を減らす・・確かに、米国特許が無効になる率は減るかもしれないが、米国特許の信頼性回復という抜本的な課題の解決にはつながらない。
Summarized by Tatsuo YABE on 2026-04-09
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1. 背景(Background)
本件は、USPTOが2026年4月5日以降の査定系再審査手続(Ex-Parte Reexamination)に関して導入した新たな運用(Official
Gazette Notice)に関するものであり、特にSubstantial New Question(SNQ)の判断前に特許権者の意見提出を可能とする制度を導入した点に特徴がある。
USPTOは、米国特許法303条(a)項に基づき、再審査請求後3か月以内にSNQの有無を判断する必要があるが、従来はこの判断に先立って特許権者の意見を取り入れる制度は存在しなかった。そのため、USPTOは基本的に請求人の主張のみに基づいてSNQ判断を行う構造となっていた。
2. 新制度の概要(Patent Owner
Pre-Order Paper)
本通知は、新たに「Patent owner pre-order paper」の提出を認め、特許権者がSNQを構成しない理由を事前に説明する機会を付与した。
主なポイントは以下のとおりである:
これにより、USPTOはSNQ判断に先立ち、特許権者の見解を考慮できるようになった。
3. 第三者請求人の対応(Requester Response)
第三者請求人による応答は原則として認められない。
ただし、以下の場合に限り例外的に認められる:
この点は、迅速なSNQ判断(3か月以内)とのバランスを考慮した制限といえる。
4. 提出期限および手続(Timing &
Procedure)
提出期限は厳格に定められている:
また、書面は相手方への送達が必要であり、これを欠く場合は不受理となる可能性がある。

5. 規則の適用除外(Waiver of Rules)
本制度の導入に伴い、以下の規則は自動的に適用除外される:
これは37 CFR 1.183に基づく措置であり、再審査請求の増加を背景として、SNQ判断の質を向上させる目的で導入された。
6.運用開始日:
本制度は2026年4月5日以降の再審査請求に適用される。
7. SNQ判断および再審査開始の基準
SNQの判断基準自体は従来通り維持される。すなわち、
が要件となる。USPTOは、請求書面に加えて特許権者のpre-order paper等を考慮し、SNQの有無を判断する。
8. 実務上の意義(Practical Implications)
本制度の導入により、特許権者は再審査開始後ではなく、開始前に防御できるという大きな変化が生じた。すなわち、再審査請求後、権利者は速やかに再審査そのものを阻止する戦略が可能となる。他方で、提出期限が短い、且つ、論点が限定されることから、迅速かつ精緻な対応が不可欠となる。
9. コメント:
本通知は、査定系再審査における手続構造を実質的に変更するものであり、特に特許権者に早期防御の機会を与える点で重要な制度改革である。
以上
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参考:
35 U.S.C. 303(a) provides, in pertinent part:
(a) Within three months following the filing of a request for reexamination . .. the Director will determine whether a substantial new question of patentability (SNQ) affecting any claim of the patent concerned is raised by the request, with or without consideration of other patents or printed publications.